春は過ぎ。

 夏も過ぎ。

 秋も過ぎ。

 そして凍えるような冬が来る。

 生気を失ったような草木は、しかし春を待ち、じっと堪え忍ぶ姿である。




 その冬の景色の中、ハデスは一人たたずんでいた。
 北風が彼の肌を刺す。
 風の音は彼の全身を貫く。
   彼は待っていた。

   様ぁ    ハデ  様ぁ  ハデス様ぁ  

 どこかで自分の名を呼ぶ声が聞こえる。

 ハデスは目を凝らす。

   その声は自分の最も聞きたかった声

 ハデスは目を凝らす。

     会える

 そして彼は見た。
 最も会いたかった  



「ハデス様……」
「ペルセポネ……」
 二人は見つめ合う。


「おかえり……」
「ただいま……」